終焉の慟哭(遙か〜舞一夜〜:あかねSS)
2006年8月25日 SS【遙か】ただ、ただ側にいたかった。
数多の灯りに足元を照らされ、それでも私は漆黒の空を見上げた。
射千玉の闇に浮かび、消えていく仄かな光。浄化された魂の火。
あれは、貴方のカケラ。
貴方だけだった。
私を「神子」と呼ばず、『私』を呼んでくれたのは。
『私』を見てくれたのは、貴方だけだった。
居場所が見つからない、途方に暮れた私と貴方。
頼りなさそうな迷い子の瞳も。
低く、水底から響くような声も。
涙を拭ってくれる、優しい指先も。
憂いを秘めた切ない横顔も。
果敢無い笑みも、すべて。すべて。
ここにいた。貴方は。
いなく、ならないで。
『そなたが神子で、よかった…』
いや。そんなこと言わないで。
私は何もできないの。
最期に『神子』って言うなんて酷いよ。
手を伸ばし、光の粒を捕まえても、一瞬にして消え去る。
感触すら、残らない。
「…いや……」
ねぇ、私、泣いてる。
なんで、涙を拭ってくれないの。
苦しい。苦しい。どうして、こんな。
「…一人にしないで…っ、季史さん…ッ!!」
やっと名前を呼べたのに。
私、貴方の名前、見つけられたのに。
こんな“終わり”は、いや。
汚れることなど構わずに地に泣き崩れていった。
龍神様、声の限り叫んで祈れば、返してくれますか。
京を救えば、あの優しく哀しい、あの人を。
[了]
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