目が覚めた時、見慣れぬ部屋で驚いたことが数度ある。
今はもう慣れてしまった、部屋。
彼の性格を表すような、整理の行き届いた綺麗な部屋。
彼の匂いが染み込んだ部屋。





「……ん……」

眩しい。カーテンが遮れなかった光が目に痛い。

素肌に触れるシーツの感触が気持ちよく、そこでふと考える。
普段、素肌で眠る習慣はない。
あるとすれば、それは彼の部屋に泊まった時か、あるいは彼が泊まりに来た時だけ。
今回は前者のようだ。
まだ覚醒しきれていない体を少し起こし、ぼんやりと辺りを見渡す。

見慣れた調度品。
部屋の主はいない。
でもまだ、シーツには体温が残っていた。
さっきまで、いたようだ。
体をもう一度ベッドに戻す。
シーツを手繰り寄せ、抱きしめる。匂いがする。

「…ユダ…」

シーツにも、ベッドにも、この部屋全部に貴方の匂いが染み込んでいる。
きっと、私にしか分からない、貴方の匂い。

体格も体力も私より遙かに上の貴方に愛された後は、とても体が辛くなるけれど。
それでも嬉しいから。だから、早く帰ってきて。側にいて。


遠くから足音がする。
貴方の足音。
もうすぐ貴方は私を優しく抱きしめて、名前を呼び、キスをする。
体は平気か、と心配げに聞く。
それから貴方が作ってくれる朝ご飯を一緒に食べて。


幸せの足音が近づくのを聞きながら、シーツに潜り込んだ。


貴方の匂いに包まれる、少し気だるくて、とても幸せな朝。









[END]

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