「……おれ…は…」


なんで。


何で


父さんのこと



『父親殺し』


「…っ違うッ、おれは…!!ただ父さんを…戦いを止めたかった…ッ!!」


『死にたいんだろう?だれかを助けて……だから』


『罰が欲しいだけの甘えん坊』



『結局自分が救われたいだけだろ?』


「違うっ!!!おれ、は…」


「スザクっ!!」

パシッ…と頬に熱が宿る。

「…ぁ……」

紫紺の瞳が心配そうに揺らぐ。
あぁ、駄目だな。また「この馬鹿」って言われちゃうな。
じわりと痛みを帯びた頬に手をあて、目を伏せた。

「…ごめん、ルルーシュ」
「いや、おれの方こそ」

いくら呼びかけても無駄だったから、強行手段を使ったと、相変わらずな傍若無人っぷりに少し呆れて「痛かったか」と聞かれ、こんな平手くらいじゃ音をあげないが「ちょっとね」と嘘を吐いた。

「悪かったな、スザク…」

それは、この事件に関わらせてしまったことへか。

それとも、あの犯人のこと…?


「いいんだ」

無理やりに微笑めば、また、ルルーシュの瞳が翳る。

「ルルーシュ…?」
「…この…」

引かれた腕に「この馬鹿!!」が降ってくるのを身構えていると、一向に怒声を浴びせられることなく、ただその少し華奢な腕の中に引き込まれただけだった。


「すまなかった」

珍しい。ルルーシュが二回も謝るなんて、と。
頭の片隅でそんなことを考えてた。

「ルルーシュ、僕、君に言ってな…」

ずっと黙っていたことがある。
君をずっと騙していたことがあるんだ。

「言わなくていい」
「でも」
「どうでもいい。だから…」

引き寄せられ、視界がルルーシュの制服の色、一色になる。

「今ぐらいは泣いておけ、この馬鹿…」

なんて泣き方をするんだ、と言われて、初めて自分が声も出さずに泣いていることに気がついた。

「っ、ごめ、ルルっ…シュ」

なんだか気づいてしまったら止まらなくて。
後から後から溢れてきて。
こんなに涙が溢れて止まらないのは、父さんの血に染まった、あの夜以来だった。


柔らかく髪を梳いて、子どもをあやすように抱きしめてくれる、
その感触が、ひどく切なくて、ルルーシュの制服を皺になるとかも考えないで、きつく握り締めた。





ルルーシュ

きっと、君は「この馬鹿!!」って怒るだろうけれど。



僕は、君を守って死にたいんだ。





[END]

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